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 【宗教學科】

宗教學科 オリジナルコラム?法王の聖書的“根拠”をめぐって(2013年3月31日)

  ローマ?カトリック教會の266代目の法王に、アルゼンチン人のベルゴリオ樞機卿が選出され「フランシスコ」として就任した。史上初の南米出身の法王の誕生である。
 
 新法王の名前は、中世の托鉢修道會「フランシスコ會」の創設者、アッシジの聖フランシスコから採られている。自らも清貧を尊び、母國アルゼンチンで貧しい人々の救済のために活動してきた新法王の経歴や信仰信念からすれば、絶妙な選択といえよう。アッシジの聖フランシスコとは、自らの財産を投げ出し、貧しい者と共にイエス?キリストの道を歩んだことから、“第二のイエス”ともいわれた人物だからである。
 
 そもそも法王とは、キリスト教諸教會の中でもカトリック教會のみが自らの統治者として奉ずる立場である。日本のカトリック教會は、その“教える”という立場を重視して「教皇」と呼ぶが、日本とバチカン市國との外交上の正式な日本語表記は「法王」であるため、日本のメディアはこの表記を用いている。
 
 法王という立場は、実は聖書には明記されていない。これは古代末期に、當時のローマ教會が自らを他の司教區座に対して優位な立場にあるとする“首位権”を主張し始めた際に、法王(Papa)という名稱をローマ司教に対してのみ特権的に用いたことに端を発する。
 
 キリスト教は313年にコンスタンティヌス皇帝によってローマ帝國の公認宗教となる。その後、皇帝は、イエスの弟子だった使徒ペトロの墓所とされていたバチカンの丘に教會堂を建てた。それは、公認以前の迫害時代に、ペトロが皇帝ネロの迫害によって殉教を遂げた場所がバチカンの丘だったという伝承に基づいている。
 
 そしてローマ教會は、ペトロとローマ教會の関係を新約聖書「マタイ福音書」にあるイエスの言葉をもとに正當化した。そこでイエスはペトロに対し、「あなたはペトロ(巖)。私はこの巖の上に私の教會を建てる」と述べ、「私はあなたに天の國の鍵を授ける」と語っている。ローマ教會は、ここでの「ペトロ」という語を、一般名詞で「巖」を意味する“ペトロ”に重ねて理解することで、彼こそがイエス自身から教會に対する権威を委譲された「イエスの代理人」であるとした。こうしてペトロは初代の法王とみなされ、その後の法王には「ペトロの後継者」として位置づけられたのである。
 
 法王をめぐるこうした神學的解釈は、カトリック教會以外のキリスト教諸教會では受け入れられていない。だがカトリック教會にとっては、法王の存在こそが、まさに教會そのものの“存立根拠”であるため、この點はどうしても譲ることができないのである。
 

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